遺伝学をベースとした多分野横断型の一般教養

私の専門分野は染色体分析技術をベースにしたヒトの遺伝学ですが、その応用範囲は、放射線の人体影響の推定、発がん物質の検定といった環境衛生学分野から、人類集団における先天性疾患の発生頻度の調査、人生の遺伝的不公平と社会保障、学習障害児への教育支援など、多くの分野にわたって少しだけ深く扱います。そこで、私の専門分野を、「遺伝学をベースとした多分野横断型の一般教養」(Interdiciplinary Liberal Arts)です、と説明することにしました。

Interdisciplineとは、多分野とか学際という意味で、従来の専門的な学問領域(discipline)のみでは扱いきれない問題を、複数の学問領域を学ぶことによって理解を深めようとする多分野横断型学問領域。

Liberal Artsとは、古代ギリシャでは統治者が哲学的議論をするために学ぶべき学問として位置付けられ、中世ヨーロッパでは専門分野に進む前の一般教養という意味で用いられたといわれています。現在は、大学教養課程の、人文科学(Art)、社会科学(Humanity)、自然科学(Science)の3分野の包括的な呼称となっています。

高校の時、将来教員になろうと思って、東京教育大学に進学しました。大学で化学を専攻し、当時黎明期にあった分子生物学に興味をもって、博士課程は東京医科歯科大学でヒトの遺伝学を専攻しました。大学で教育職についてからは、保健学や臨床検査学の立場からヒトの遺伝を教え、遺伝学の立場から社会福祉学も担当しました。大学院の国際協力研究科では環境衛生学を担当して化学物質の人体影響を教えました。

我が来し方を振り返ると、化学、遺伝学、保健学、環境衛生学、社会福祉学、国際協力などの分野を勉強し、それぞれの専門の先生方と議論し、それぞれの分野の博士論文作成の指導をしました。自分の興味と大学からの要請にそっているうちに、多くの分野を横断する視点と知識が涵養されたように思います。そのような経歴から、遺伝学をベースとして学際的な問題を包括的に議論しようと思っています。