
染色体異常誘発機構から、ヒトの遺伝学、環境衛生学、社会福祉学へ
生命はその恒常性を維持するために多くの場合、複数の代謝経路や刺激伝達経路を備えています。したがって、染色体異常の誘発機構についても、化学物質の生体影響についても、類似の作用をもつ物質の効果と比較しながら、慎重に実験と考察を重ねなければなりません。この作業は確かな前提から出発して、論理的な考察を繰り返すという科学研究の醍醐味です。
染色体異常生成機構の研究は、現実の社会生活への貢献度は低いのですが、論理的な考察によって知的好奇心を刺激する取り組みでした。一方で、フッ素の人体影響の考察においては、染色体異常生成機構の知見を基に、フッ素が重大な人体影響を与えないと推測し、小児歯科領域での積年の疑念に応えることができたと考えています。
染色体異常疾患は多くの場合福祉の対象になります。偶然の突然変異によって障がい者となった人たちを、そのための努力をしたわけではない健常者が支えます。社会福祉の基本理念の出発点がここにあると思います。